幼い頃、「お盆の季節には絶対に海に入ってはならない。もし入ったら足を引っ張られて、沖の果てまで引きずり込まれてしまうぞ!」と親戚や年長者から脅かされた経験はありませんか?
私自身は、「足を引っ張られる」というのは耳にしたことがありませんでしたが、「お盆の時期は絶対に海に近づいてはいけない」と強く言い渡されてきたことは覚えています。
実際夏休みという貴重な時間と両親が有給休暇を取れるチャンスが重なったにもかかわらず、お盆の海水浴は一切許されませんでした。
あなたもお盆に海のレジャーを楽しみたいけど、「お盆の海に入ると足を引っ張られる」といった迷信が気になり、不安になっていませんか?
今回はそうした「お盆の海で足を引っ張られる」という迷信の由来を調べるとともに、お盆の海は絶対に泳ぐべきではない理由についてもお伝えします!
お盆に海に入ると足を引っ張られる?その由来とは
早速ですが「お盆の時期に海に入れば、亡くなった人の怨霊に足を引っ張られる」という話の由来を調べてみました。
すると一般的には「死者の魂に足を引っ張られる」という恐ろしい迷信が広く浸透していますが、地域によっては「海坊主」という妖怪に足を捕まれるという別の型もありました。
ただ霊的存在がいつでもどこにでもいそうなものですが、なぜお盆の時期の海ばかりが特に危険視されているのでしょうか。
深く掘り下げてみると、お盆の海で足を引っ張られると言われる主な理由は以下の2パターンに集約されました。
- お盆は死者の魂が現世に帰ってくる日であり、彼らの魂が海に集まるから。
- 地獄の釜の蓋が開き悪しき魂が大挙して押し寄せて海に集まるから。
昔から水と霊は深い関わりがあると考えられてきました。
そういった伝承に基づき、お盆の季節には死者の魂あるいは地獄からの邪悪な魂が海に群がり、人々に危害を加えるという恐ろしい言い伝えが各地に残されてきたのです。
お盆は死者の魂が現世に帰ってくる日
お盆とは、先祖の霊魂がこの世に戻ってくる大切な期間です。
私たちは墓参りをし戻ってきた先祖の魂をお迎えして、家族一同であの世からの客人をもてなします。
ところがきちんと供養されることなく放っておかれた寂しい魂たちは、行き場を失いそのまま海に集まってくるのだとか。
中でも海難事故や溺死などで亡くなり、遺体すら発見されていない方々の霊魂は、未だ成仏の日を迎えぬまま海をさまよい続けているのです。
お盆の海には、そうした成仏を遂げられずにいる怨霊がおびただしい数でいるということになります。
私自身は残念ながら霊的なものが見えたり感じられたりする力はありません。
しかし霊感がある方々は、お盆の海に大量の怨霊が集まっているのを目撃しているそうで、想像するだけでも背筋が凍るひんやりとした気分になります。
成仏できずにいる霊魂は常に寂しさにさいなまれています。
そのため海で気楽に遊んでいる人間を妬み、自分もあの世に連れていってくれと願い足を掴んで引っ張ろうとするのだと言われています。
地獄の釜の蓋が開くから
暗黒の世界である地獄にも一年で唯一の休暇があるそうです。
その時期になると冥府を統べる閻魔大王と手下の鬼どもが、普段は厳重に封印されている地獄の大釜の蓋を無残にも開け放ってしまうのだとか。
その時期というのがまさにお盆の時期なのです。
地獄の住人たちはこの機会を狙って地獄から抜け出し、この世とあの世を自由に行き来することができるというのが怖恐ろしい言い伝えの内容です。
盆の海で足を引っ張られるという由来になる2つの言い伝えを紹介しましたが、いずれも迷信に過ぎないのが実情です。
「夜に口笛を吹くと貧乏になる」「夜に爪を切ると不幸が訪れる」といった、根拠のない迷信と同じような類いのものと言えるでしょう。
ただお盆とは亡くなった先祖の霊を家に迎え入れ、心を込めてもてなす大切な期間です。
このようなご先祖様に対する感謝と敬意を表す機会に気楽にレジャーを楽しむなどとんでもない無作法だと、先人たちから強く戒められてきたに違いありません。
この機会に先人の知恵に学んでお盆の意義を理解し、ご先祖様への尊崇の念を新たにすることが大切なのかもしれません。
お盆に海に入ると足を引っ張られる話が迷信でも泳いではいけない理由
お盆に海に入ると足を引っ張られるという話が迷信であることはお伝えしましたが、それでも絶対にお盆の時期に泳いではいけません!
なぜならこの時期はあらゆる危険が潜んでいるからです。
クラゲが大量発生している
8月から10月にかけては、クラゲの大発生期です。
そしてこの時期はまさにお盆の日と重なっています。
一般的に目にするミズクラゲならば毒性は低く、そこまで危険なものではありません。
しかし強烈な毒性を帯びたクラゲの種類も存在しており刺されれば重症に陥る危険性もあり得るので、絶対に気を付ける必要があります。
そのような背景からお盆期間中は海水浴を控え、クラゲ対策を万全に講じることが強く求められているのです。
軽率に海に入れば、有毒クラゲに刺されて命を落とす惨事につながりかねません。
クラゲの発生時期とお盆が重なることをよく理解し、リスクを冒すことなく海に入るのはやめるべきです。
土用波に流される恐れ
お盆の時節には、台風の影響で通常とは全く異なる性質の恐るべき大波が出現します。
それが”土用波”と呼ばれる災いの波です。
土用波とはその名の通り夏の土用の頃に発生する極めて高波のことを指します。
この土用波には”うねり”という特徴があり、沖合から見る限りでは決して高波には見えないのですが、砂浜に近づくにつれて急激に波高が高くなるが恐ろしさがあります。
近年でも土用波に思わぬところで押し流され、溺れ死ぬ事故が後を絶ちません。
たとえ波打ち際で遊んだり少し離れた場所から釣りをするだけでも危険が伴います。
家族でレジャーを楽しもうと思っても、海の近くは絶対に冒せない場所なのです。
海の水の温度が低い
お盆の時期は真夏日が続き、快適な海水浴日和になります。
しかし気を付けなければならないのが、この季節の海の冷たい水温です。
夏真っ盛りの暑さに反して、お盆の海の水温は想像以上に水温が低くなっています。
そのため冷たい海水に長時間さらされていると、体温が奪われ、足が突然力が入らなくなる恐れがあります。
最悪の場合、低体温症を起こし心臓の動きが不規則になって心臓麻痺に陥ってしまう危険すらあるのです。
お盆の海水浴は表面上は心地よく思えても、水の冷たさから生命すら脅かされかねない隠れた危険が潜んでいるということはよく覚えておきましょう。
離岸流が発生する
楽しく海で泳いでいるつもりが、いつの間にか沖の方へどんどん流されてしまった経験はありませんか?
それは海に潜む恐ろしい「離岸流」の仕業なのです。
離岸流とは、その名の通り砂浜から沖合いへと湧き出る強烈な流れのことです。
一度このひとすじの流れに巻き込まれてしまうと必死に泳いでも決して岸に戻ることはできません。
そしてついには力尽きて溺れ死ぬ最悪の事態を招きかねないのです。
この離岸流の発生時期が、まさにお盆の前後と重なるのが恐ろしいところです。
お盆の時期が近づくにつれ、この危険な離岸流が多発する可能性が高まります。
海で楽しむ予定が窮地に追い込んでいく離岸流。
お盆に遭遇すれば、『海に入ると足を引っ張られる』という言い伝えどおり、命を落とす危険性があるのです。
お盆前なら海に入っても大丈夫?
これまでお盆の海で足を引っ張られるという迷信に加え、危険な高波、低水温、有毒クラゲの発生など実際に命を脅かす恐ろしいリスクがあることを紹介してきました。
霊的な話は別としてこうした自然現象の危険性を考えれば、お盆の時期に海水浴を楽しむことは避けた方がいいでしょう。
仮に海に入るとすれば、お盆に入る8月13日までがギリギリです。
しかしお盆は家族そろって休暇を取れる貴重な機会でもあります。
子供たちのためにも、家族レジャーを楽しみたい気持ちは誰しも同じはずです。
「どうしてもこの時期しか海に行けない!」という事情もあるでしょう。
そんな場合は天気予報で波の状況を確認し、極力海水浴自体は控え砂浜でレジャーを楽しむに留めるのがいいですね。
命を脅かすリスクを冒すくらいなら、安全第一を旨として楽しむ工夫が必要です。
お盆に釣りをするのは問題ない?
「お盆に海水浴はNGなら、釣りくらいなら問題ないのではないか」と考える人も多いでしょう。
しかしお盆の時期は釣りも許されていない地域が多数あるという事実をご存知でしょうか。
釣りは生き物を殺す行為にあたるため、お盆の時期には海水浴とは別の理由から禁忌視される伝統があるのです。
先祖の霊を敬う時期に、命あるものの命を奪うような行為は避けるべきだと古来から戒められてきたのです。
さらに、釣りをする上での安全面からも、お盆の時期に堤防や水辺に出かけることは避けた方がいいでしょう。
お伝えしたようにお盆の時期は高潮や台風の危険性が高まるため、気を緩めれば水難事故にあうかもしれません。
安全性と伝統の両面からこの期間は釣り針を手に取らず、水辺に近づくことすら控えるべきです。
お盆に海に入ると足を引っ張られる?その由来と泳ぐべきではない理由まとめ
今回はお盆に海に入ると足を引っ張られるの?その由来と絶対に泳ぐべきではない理由についてまとめてみました。
お盆とはいえせっかくの貴重な休暇ですから、家族でレジャーを楽しみたい気持ちはよく分かります。
しかし命がけでわざわざ危険な場所に出向く必要はまったくありません。
特に幼い子供を連れての海水浴となれば、気が気ではありません。
低水温や高波、離岸流などの危険が待ち受ける海は、あまりにもリスクが高過ぎます。
「海に行きたい!」と子供に泣かれたとしても、保護者として「絶対に行かない!また別の日に!」という断固たる決意が何より大切なのです。
しかし海そのものを楽しむ機会を完全に奪うのも気が引けますよね。
家族で砂浜を散策したり、海を遠くから眺めるくらいならリスク少ないです。
こうした適度な距離感を保てば、子供たちの興味関心と保護者の安全配慮を同時に満たせるでしょう。
お盆期間中のレジャーは、そうした安全第一を旨とする工夫が不可欠です。
一家の命より大切なものはありません。
どうか無用な危険を冒すことなく、この機会に家族の絆を深められるよう願っています。
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